ハマル族の村を発ち、次はムルシ族という少数民族の村を訪れたいと思います。トゥルミの村からバイクで2時間半ほど、向かうは「ジンカ」という村です。
ムルシ族は、下唇にお皿をはめるという強烈な特徴を持っており、エチオピア南部を訪れる旅人を魅了しています。とにかく見た目のインパクトが半端じゃありません。
※画像 Wikipediaより
ところでなぜ彼らは唇にお皿をはめているのか?実は、それには悲しい過去があるようです。
数百年前アフリカで奴隷貿易が盛んだったときに、自分たちを醜く見せる事で商品価値を下げ、さらわれないようにした事が始まりだそうです。それが徐々に文化となり、今では価値観も変わり、ムルシ族の中では“大きなお皿をはめている”ほど美しいとされているとのこと。皆、15歳くらいからお皿をはめ始めているそうです。
過去は悲しいですが、是非そんなユニークな彼らを一度見てみたい!という事で、ここジンカにやってきました。ちなみにムルシ族の村までは、ここジンカからさらに車で1時間以上ほど先にあります。
すると突然シサイが「俺はここジンカでも、ムルシ族がいる場所をちゃんと知っている。Sohtaはわざわざムルシ族の村まで行く必要ないかもな」と言ってきました。
おぉ、なんと心強い!
実は、もともと少し懸念していたことがありまして。
噂に聞くと、ムルシ族の村はもはやある種の観光地になっていて、外国人が訪れても極めてビジネスライクに「1写真5ブル(約25円)」というルールのもとひたすら写真撮影をしていくという感じだそう。
もちろん、彼らの伝統に敬意を払い、写真を撮らせていただく事に対してお金を払うそれ自体は全く問題ないのですが、なんだか…あまりにもビジネスライクな感じで写真撮影だけしに行くのも少し寂しいなあ、と思っていたこの頃。ジンカでなら、逆に少しでも自然体な彼らに出会えるのかも、なんて気もしてきました。
という事で、早速シサイと共にジンカの町を散策です。
「彼らはこの病院の前とか、この食堂によくいるんだよ」と、色々と教えてくれるシサイ。
なるほど本当に詳しい様子。どんどん彼の後をついていきます。
シサイ「この市場にもいるんだよな〜」
ふむふむ。確かにいそうな雰囲気。本当に、良いガイドに出会えたものです。
シサイ「この村は何回も来てるからね。何人かは顔も覚えているさ」
さすがシサイ、ムルシ族とも顔見知りだとは!
そんな感じで歩き回ること約40分。
ムルシ族は見つかりませんでした。
シサイに「ムルシ族いないね」と言うと、「あれ〜、いる時もあるんだけどな…」と。
よくそんな「いたらラッキー」くらいのトーンで大口叩いてたわ、ほんまに。そして文句を言いながら引き続き歩く事20分。
ついに、一人のムルシ族を見つけました!!…って、お皿はめてない!笑
いやもちろん、お皿はめてないVerも個性的ですし、出会えたのは嬉しいんですけど…これじゃない!笑
そんな訳で結局、翌日の朝にムルシ族の村を訪れる事にしました。
ムルシ族はかなり気性が荒い民族という事もあって、ガイドだけではなくボディーガードの同行が義務付けられています。
シサイはボディーガードの資格を持っていないので、シサイの友人の知り合いに連絡をとり、明日はその彼に村まで連れていってもらう事になりました。
この日は時間があったので、近くの博物館も見学。
中では、この周辺地域に住む少数民族の文化や歴史を紹介する展示があります。博物館には、民族についてまとめた本も売っているので興味がある方は是非足を運んでみてください。
ちなみに博物館は高台にあるので、ここからジンカの村が一望できますよ。
さて、夜。シサイと食事を取っている時に、ムルシ族の村まで連れていってくれるガイド(兼ボディーガード)が料金を受け取りにきました。往復費や入村料もろもろで60ドル。
この日は、諸々と調整をしてくれたシサイに感謝を意を示して食事をご馳走し、ささやかな宴会となりました。
翌朝6時半。眠い目をこすりながら頑張って起床。
バッチリ準備をしていてホテルでガイドを待っていたのですが、時間になっても彼が現れません。シサイからも何度か電話をしてもらいますが、繋がらない様子。
頑張って起きたのに寝坊かよ〜
とりあえず連絡がつくまでひたすら待ちます。現時点で、彼以外にムルシ族の村まで行く手段はありません。
待つこと30分…。
1時間…。
能天気なシサイも、明らかにイラついています。
(まさか寝坊どころじゃなくて、金だけ持って失踪したんじゃないか?)
そんなことを考え始めた頃、ついにシサイの電話が繋がりました。
神妙そうに話すシサイ。もちろん、現地の言葉なので僕には何を言っているか全く分かりません。でも、とりあえず電話が繋がっただけでも良かった。すぐに準備して来てもらいたい!
すると、電話を終えたシサイが事情を説明してくれました。
「彼、いま刑務所ですね」
…!?
…お、おう、刑務所ね。そりゃなかなか連絡が取れない訳です。それならそうと刑務所入る前に一言言って良かったのに…
って、何が起きたんですか。笑
話によると、シサイは僕との宴のあと一度ホテルに帰ったものの、その後そのドライバーと再度合流。二人で深夜まで飲み続けたのちに解散。
楽しい飲み会の後ドライバーがバイクで家まで帰っている途中警察に見つかり「飲酒運転」かつ「深夜運転」で捕まったとのこと。(エチオピアでは22時以降の車の運転が法律違反)
ドライバーが出発前日の深夜に飲んだくれて法律侵すとは、さすがです!さすがエチオピアやー!笑
結局、予定から3時間以上遅れて(なぜだか)釈放されたドライバーがホテルにやって来ました。彼は謝ることもなく「さあ行こうぜ!」くらいのノリでバイクの席を空けています。色々思うところはありますが、彼らには文句を言っても無駄(笑)!なのでとにかくムルシ族の村へ向かう事に。
そんなこんなで出発して約20分。
その頃から雨が猛烈に降りはじめ、道もぬかるみ、なかなかスピードが出せなくなってきました(そしてバイクの二人乗りはあまりにも過酷になってきました)。
悩みましたが…これ以上遅れると帰りのバスに乗り遅れそうでしたしなんだかテンションも下がってきたのでムルシ村への訪問はやめる事にしました!なんだか、この状態で村に到着5ブルずつ渡して写真撮らせてもらっても素敵な時間を過ごせる気がしない!
…という訳で、エチオピアの少数民族巡りは終わり!
午後14時のバスに乗り、夜遅くにアルバミンチへ。さらにその翌日、アルバミンチからアディスアベバへとバスに乗り、エチオピアを発ちました。
ムルシ族を見れなかったのは少し残念ですが、意外とあまり後悔はないですね。結局のところ、強烈にビジネスライクな雰囲気の中で彼らの姿を写真に収める、という事自体にあまり魅力を感じていなかったのだと思います。
ですが個人的にはそれ以上に、村を巡る道中で見た彼らのリアルな生活、川を超えて目撃したハマル族のブルジャンプ、彼らにご馳走になった(とても酸っぱかった)地ビールなど、本当に良い経験が出来ました。
エチオピア、最後の最後まで刺激たっぷりでした!またいつか戻ってきたい!
次はいよいよエジプトへ向かいます。これからは北アフリカとヨーロッパ、これまでと比べると文明の世界へワープする気分です。寂しさもありますが、楽しみ!バイバイ、エチオピア!
Sohta Yamaji
1985年生まれ、大阪出身。
約1年かけて世界を旅しています。
帰国しました!ブログ書きます!笑