アタカマ砂漠から空路でチリの首都サンチアゴへ。更にサンチアゴからバスで6時間、アルゼンチンの「メンドーサ」という町にやってきました。メンドーサはワインの産地として有名ですが、僕がここへ来たのはワインを楽しむ為ではありません。
目的は、南米大陸最高峰の山『アコンカグア』に登ること。標高6962m、世界全体で見てもアジア以外では最も高い山です。もちろん、僕の人生の中でも最高地点を目指すことになります。
一番天候が安定するベストシーズンが12〜1月のため、何とか1月中に間に合うようにスケジュールを合わせてきました。メンドーサに到着したのが1月12日。ギリギリ間に合います。
アコンカグアに滞在したのは計12日。本当に素敵な出会いに恵まれながら、圧倒的な山のスケールを感じる事が出来た登山でした。
登山準備編
メンドーサに到着。ここは緑が多く気候も良い為かなりリラックスした雰囲気です。さて、早速登山に向けての準備を進めます。主な準備としては以下の3つ。
・ベースキャンプまでの荷揚げ手配
・登山パーミットの申請
・登山用具のレンタルおよび食料等の買い出し
丸2日間、町中を歩き回り一気に準備を進めていきます。
まずは、ベースキャンプまでの荷揚げ手配。今回の登山では、テント泊を約2週間続けるので食料やガスだけでもかなりの量が必要です。山の麓から全て自力で運ぶのはあまりにも大変なので、中間地点であるベースキャンプまで「ムーラ」という(馬とロバを足して二で割ったような)動物に運んでもらうサービスを使います。代理店はいくつかありますが、僕は『Inka Expediciones』という所で手配。『Lanko』という代理店も人気で、値段はこちらの方が安いです。
次に登山パーミットの手配。パーミットは登山タイミングによって価格が変動します。やはりベストシーズンの12〜1月が最も高くて800ドル。高い…!
最後に登山道具と食料。登山用具は、テントや寝袋、冬山用の登山靴や調理用のガスストーブなど基本的に何でもレンタル屋で揃います。質は特段良くはありませんが、ネパールの偽NORTH FACEよりはしっかりしています。笑
僕がレンタルしたお店『EL REFUGIO』では、アコンカグア麓で育った親子がレンタル担当。インナーグローブとかサングラスとか、色々おまけ付けてくれました!
悩んだのは食料選び。とにかく登山中はエネルギーの確保が欠かせないので食事は超重要ですが、食材を増やすとその分運ぶ荷物が重くなります。日本では、普通に美味しいアルファ米やインスタントパスタなどがありますが、残念ながらここにはそんな素敵なものは売っていません。
結局、味気ないインスタントラーメンやスパゲティ、マッシュドポテトの素やクッキーなどひたすらカロリーを取れるものを大量に揃えることに。食事の楽しみは期待出来ませんが、まあ動ければOKという事で!
その代わり、今のうちに肉や〜!という事でステーキを食べました。さすが牛肉の国アルゼンチン。1000円ほどでも十分美味い!
そんなこんなで準備をバタバタと終え、出発前夜のホステル。
気合いを入れようと思い、ネットで『世界の果てまでイッテQ!』でイモトがアコンカグア登山した時の動画を見ます(イモトは登頂失敗…)。よっしゃ、イモトの借りも返してやるぞー!!
すると、夜10時頃にアコンカグア登頂帰りの中国人女性がホステルにやってきました。ちょうど山から帰ってきて、ホテルを探しているみたいです。
せっかくなので、山の様子などを少し聞いてみました。
「私は世界中の山を登っているけど、今年のアコンカグアはかなり過酷よ。例年と比べて圧倒的に雪が多いし、風も強い。私はなんとか強引に登頂したけど、寒さと風で顔がこんな状態になってしまったわ。」
彼女の顔は軽い凍傷みたいになっており、明らかに日焼けではないと分かる程に真っ赤に痛んでいました。
「とにかく防寒対策は徹底的にした方が良いわよ。雪対策もね。登頂率はかなり低いと思うわ。本当に過酷だけど、とにかく頑張って!」
…て、かなりヤバそうやないか…!!
イモトが高めてくれたモチベーションが早速下がってしまいそうでしたが、まあ山のコンディションは変えられません。その日は早めに寝て、いよいよ出発です!
登山口〜ベースキャンプ(Day1〜3)
メンドーサの町からバスで3時間ほど、ペニテンテス(2800m)という村に降り立ちます。
ここでムーラに預ける荷物を引き渡します。重さは23kg。自分の背負っているバックパックが10kgちょいなので、合わせて35kg程が今回の荷物です。
さて、いよいよ出発!ここから最初の宿泊地『コンフルエンシア(3400m)』までは約3時間の道のり。写真正面の雲で隠れている山がアコンカグアです。やはりめちゃめちゃ大きい!
なんだか雲も迫力あります。
初日は足慣らしという感じで、昼過ぎにはコンフルエンシア到着。いくつかの登山代理店がテントを並べています。
Inka社はアコンカグア登山代理店としては最大手らしく、テントの数も一番多かったです。
到着したら早速出てきたフルーツ盛り合わせとジュース。生き返ります。
Inka社テントでリラックスしていると、ちょうど下山途中のグループが降りてきました。なんと彼らは、7人中、誰も登頂出来なかったとの事。うち一人は去年の登頂者なのですが、今年はやはり雪が多く、あまりに時間がかかったので6800m地点で引き返す判断をしたみたいです。やはり今年は一筋縄ではいかなさそうです。
そして、更に悲しい知らせが。
昨日、頂上付近で単独登山をしていたギリシャ人の男性が亡くなられたとのこと。滑落ではないので、高所による突然死だろう、との話でした。
…マジか。
標高7000近い山ともなれば、もちろん人が死ぬ事もあります。しかし、こうやって実際に起きた話をその場で聞くと、あらためて山の怖さを認識させられます。
「とにかく自分のコンディションに対して耳を傾けて、決して無理はしない。」
一段と身を引き締め、あらためて自分に言い聞かせました。
アコンカグアでは朝も夜も遅いです。空が明るくなり始めるのは8時頃、日の入りは21時頃です。暗くなるとかなり気温も下がるので、早々に寝袋に入ります。山の中では毎日10時間くらい寝てました。
Day2は、高度順応の為にここコンフルエンシアにもう1泊。順応を兼ねて標高4000mほどのポイントまで登り、また戻ります(往復4時間)。ここからは、アコンカグアの南壁が拝めます。僕らは違いますが、この壁を登っていくルートもあります(めちゃめちゃ危険なルートです)。
そして翌日(Day3)、この日は最初の正念場。コンフルエンシアからベースキャンプ(4200m)まで、20km近くを歩く長丁場です。
彼らがムーラです。ネパールの「ヤク」とは違い、人とすれ違う時は避けてくれます。馬は賢いですね。
周囲の山が巨大すぎるので、歩けど歩けど景色が変わりません。こういう時は音楽を聴きながらリズムよく歩きます。天気も良くて気持ちいい!
中間地点を越えてからは登りも増えます。まだ序盤とはいえそれでも標高4000m、息が切れます。
コンフルエンシアを発ち7時間。ようやくベースキャンプに到着!
アコンカグアのベースキャンプ は世界一充実しているとも言われる規模で、これまたたくさんのテントが並びます。なんとアートギャラリーもあります。Wifiも使えます(10分15ドル払えば…)。
あまりにも持ってきた食料がお粗末なので、ベースキャンプではInka社の食事を依頼していました。ダイニングテントも広々で、食事以外の時間もずっとここを使えるので本当に快適でした。
食事はスープとメイン、晩御飯だけデザートが付きます。今のうちにタンパク質とビタミンを確保や〜!
そして、これからずっとお世話になるテント。ハイキャンプの強風にも耐えてくれました。
まずはここベースキャンプでじっくり高度順応し、その後いよいよ頂上アタックに向けて高度を上げていきます!
Sohta Yamaji
1985年生まれ、大阪出身。
約1年かけて世界を旅しています。
なんで、そんな荷物少ないの?
私、ムーラに60kg、自分で23kg…
計83kg…
しかも、よけてくれるはずのムーラに、荷物でドカンとどつかれて思いっきりコケたよ〜(笑)
食料の量が一番だとは思いますが、ウェアとかも最低限しか持っていってないのでその差ですかね〜。けど、単独で来てる人と話してると、だいたい30〜40kgでしたよ!